消費税増税の不当性

 日本経団連が基礎年金の全額税方式を打ち出したり、消費税=社会保障目的税論者の与謝野馨氏がやたらとメディアに露出したりするなど、いよいよ年金目的を口実にした消費税増税への動きは不可避の状況を迎えている。
 この問題は支配層において「消費税増税と大企業の負担の軽減」というゴールだけはとっくに決まっていて、あとはどうやって有権者を騙していくかという方法論の相違と、企業負担の軽減方法の相違(全額税方式にして企業の保険料負担を廃止するか、消費税増税で浮いた財源を法人税減税に使うか)があるにすぎない。与謝野氏は『週刊東洋経済』3月29日号で「法人税を低める圧力はあっても、税率を引き上げる理屈は見つからない」と断言しており、その点では竹中平蔵氏ら「上げ潮」派と全く変わらない。大企業の負担を庶民に転嫁するという点では完全一致しているのである。

 以前某所で、収入にかかわらず月額固定という超逆進的な国民年金の保険料を廃止して消費税に切り替えた方がましではないかという意見があったが、この見解は年収の14%強一律負担の(つまり定額ではない)厚生年金を考慮していないだけでなく、現在消費税の4割以上を地方に回していることや、消費税の使途が基礎年金だけではないことを失念しているという問題がある。実際、現在出ている年金=消費税論は「保険料を廃止して消費税で基礎年金すべてをまかなう」か「保険料を維持して国庫負担分(現行3分の1、来年度以降は2分の1)をすべて消費税でまかなう」かのどちらかである。
 昨年度の場合、地方消費税を除く消費税収が約10兆6000億円、うち地方へ回した分を除いて国に残ったのは約7兆5000億円。対して基礎年金給付総額は約19兆円、うち国庫負担は約6兆6000億円。しかもほかに老人医療に約4兆2000億円、介護に約1兆9000億円かかっていて、これらの主要な財源が消費税である。仮に消費税を10%にしても基礎年金を全額賄うことなどできない。無理に「基礎年金=消費税のみ」を断行すれば、よほどの大増税になるか年金以外の社会保障の歳出を削減することになりかねない。一方、現行の保険料を維持したまま、国庫負担分に消費税を充てる場合、逆進性が強化されるのは言うまでもない。

 そしてここが重要なのだが、増税しても1人当たりの給付は増えない。増税する一方で給付を増やす予定が全くないのである。ましてや現在年金保険料を支払えない貧困層にとっては、消費税増税はいわば「強制徴収」と同じ役割を果たす。それでいて貧困層は支払期間の不足により、受給年齢に達しても年金の給付を受けることができないか、雀の涙ほどの給付しか受けられない。非正規労働者の大半が高齢者になった時に生活保護受給者になると言われる所以である。
 保険料制度維持派も全額税方式派もこの問題について今のところ何ひとつ有効な方策を提示していない。たとえば加入履歴を無視して全員に年金給付を保障するというような案を出す気はさらさらないのである。そもそも年収200万円とか100万円の貧困層にとっては、消費税が1%引き上がるだけでも死活問題である。消費税増税は新たな「官製貧困」の拡大でしかない。

 現在の景気後退の主因は、原油や穀物の世界的な高騰に端を発した物価上昇によるコスト増だが、それを考慮すれば最大の景気対策は消費税の減税もしくは廃止である。法人税の減税では一部の企業にしか恩恵はないが、消費税の減税はすべての企業に波及し、家計にも恩恵がある。減税分は所得税の総合課税化及び累進強化と相続税の課税ベースの大幅拡大でいくらでもフォローできる。
 消費税問題の本質は、「大企業が応分に税負担」対「経済的・社会的弱者ほど重い負担」という対立である。しつこいようだが「歳出削減でも消費税増税でもなく、金持ち増税を」である。まずは「財源が消費税しかない」というウソを見破ること。

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by mahounofuefuki | 2008-05-16 20:18


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