東京都の「ネットカフェ難民」支援

 東京都が運営する「ネットカフェ難民」相談センター「TOKYOチャレンジネット」が今日から本格始動した。行政の対策と言えばこれまで生活保護くらいしかなく、それも窓口での「水際作戦」や「辞退」強制などにより十分な機能を果たしていなかったが、ようやく行政がこの問題へ本格的に取り組み始めたと評価できよう。
 共同通信(2008/04/25 10:26)によれば、東京都内での生活時間が半年以上ある成人を対象に、住宅資金40万円まで、生活資金20万円までの貸付を行うという。「日雇派遣」のような不安定かつ低賃金の雇用で、預貯金もできず、家賃を滞納したり、住居の契約更新時にカネを払えなかったりして、住むところを追われるという例が後をたたない中、今回の事業の成否は日本の貧困の行方を左右するとさえ考えている。

 ところでマイコミジャーナルの記事に「TOKYOチャレンジネット」の所長の「ネットカフェ難民に甘いのではないかという声があるのも承知しているが」という言葉が載っているが、一昨年ごろからマスメディアがずいぶんと実態を告発する報道をしているにもかかわらず、いまだに「自己責任」論を盾に「甘い」と非難する人がいることに驚かされた。
 この点については昨年ブログで次のように述べたことがある。
 「ネットカフェ難民」に対しては、「もてる者」たちから、労働意欲が低い、能力が低いといった批判があるが、こうした批判は社会の厳しい現状に対する無知をさらけだしているようなものだ。
 現在の日本では、経済的に自立でき、人間らしい社会生活を営める仕事は限られている。どうしても「狭き門」からあぶれる人々がいるのだ。資産がなく、家賃を払えるだけの収入がなく、住居を追われた人々にとって、ネットカフェしか雨露をしのげる場はないのである。

 「努力が足りない」という非難もあるが、はじめから資産やコネをもっている人と、そうでない人との差は「努力」では埋められないほど大きい。まれに「成り上がる」人がいても、競争社会は「イス取りゲーム」である以上、その分、別の誰かがイスを失っているのである。
 労働意欲を失くすのも、意欲がもてるような労働環境にないからだ。労働者が長時間労働と低賃金で喘ぐ一方、巨大企業家は政府の優遇政策によって、ますます儲けを増やし、それを下で支えている労働者に還元しないのでは、意欲など持てない人々が続出するのも当然だ。特に非正規雇用ではキャリアアップも昇給もない場合が多く、失業に怯えながら明日なき今日を奴隷のように生きている。意欲など持てないよう仕向けておきながら、意欲を持てと言うのは矛盾している。
 「TOKYOチャレンジネット」は、「チャレンジ」という名の通り「努力主義」を前提にしていること、支援対象を「日本国籍」に限定していること(永住外国人を含まない)、住居も仕事もない人を想定していないことなど問題もある。ネットカフェに「宿泊」する日銭もなくて、ホームレスになってしまう人ももはや珍しくも何ともない現在、「仕事はあるが住居がない」という人に支援を限定する理由はないはずだ。
 同時に地方レベルの対症療法のみならず、貧窮者を食い物にする「貧困ビジネス」自体にメスを入れない限り、常に「転落」のリスクは続く。これで終わりではなく、あくまでも貧困対策の始まりにすぎないことを我々は自覚しなければならないだろう。

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by mahounofuefuki | 2008-04-25 20:40


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