立川反戦ビラ事件で不当判決

 2004年に立川市の自衛隊官舎へ自衛隊のイラク派遣に反対するビラを配布した市民団体「立川自衛隊監視テント村」のメンバーが住居侵入罪に問われていた刑事訴訟で、最高裁は被告の上告を棄却した。これにより一審無罪判決を破棄して被告を有罪とした控訴審判決が確定する。

 この事件は表向き住居侵入罪だが、多数の商用チラシや与党の宣伝ビラなどを不問に付して、「テント村」のビラだけを検挙した点で、明らかにイラク派遣反対運動への政治的弾圧である。直接的な弾圧法規ではなく、刑法が定める一般的な容疑で、時の国家権力にとって邪魔な者を有罪に処すのは、戦前からしばしば行われた常套手段であり、こうしたことが平然とまかり通るのは、現在この国には正当な政治活動の自由を社会的に保障する地盤が失われていることを如実に示していよう。

 とはいえ訴訟の争点はあくまでも住居侵入罪なので、被告のビラ配布が住居侵入に当たるのかどうかを検討しなければならない。
 今回確定する判決の問題は次の2点である。①被告らが立ち入った自衛隊官舎の敷地と共用通路を刑法第130条の「人の看守する邸宅」とみなしていること。②自衛隊官舎の管理者が関係者以外の敷地内立ち入りを禁止していたことを「侵入」の要件としていること。

 ①については、居住空間ではない敷地や通路は個々の住人の居住権が及ぶのかという疑問が生じる。一個人の邸宅ならば、その敷地には居住権が生じるだろう。しかし、集合住宅ではそれぞれの住人の部屋にはもちろん個々人の居住権は生じるが、敷地や通路は個々人の占有物ではない以上、それを「邸宅」とみなすのは無理があるのではないか。これでは例えば新聞配達のためにアパートの通路を通るのも「住居侵入」になりかねない。
 ②については、管理者の意思が居住者の意思とは限らないという問題がある。判決では管理者が官舎の出入り口に掲示した「禁止事項」に居住者の意思が反映しているか確認を行っていない。いくら自衛隊でも個々の隊員に特定のビラを読むことを禁じることはできない。管理者(自衛隊)が示した「禁止事項」そのものの正当性を問わねばならないはずだが、裁判所はこれを行っていない。

 いずれにせよ、最高裁が「お墨付き」を与えた判例は他の類似の訴訟に影響することになる。以前、当ブログで紹介した葛飾の共産党ビラ配布弾圧事件も控訴審が有罪判決を下し、現在最高裁で係争中だが、悪影響が心配される。また、政権批判的な政治活動に委縮効果を生む危険もある。
 政治活動において戸別訪問とビラ・チラシ配布は世界のスタンダードである。日本がこれを認めないのは、現在世界の普遍的原則である立憲主義・民主主義の否定にほかならない。これがどれほど恥ずかしいことか最高裁は理解していないと言わざるをえない。

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共産党のビラ配布に対し不当判決

【関連リンク】
判決要旨 住居侵入被告事件(平成17年(う)第351号)-立川・反戦ビラ弾圧救援会
立川・反戦ビラ弾圧救援会
村野瀬玲奈の秘書課広報室|ビラのポスティングを有罪と考える人に説明。(立川反戦ビラ入れ裁判をめぐって)
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by mahounofuefuki | 2008-04-11 20:23


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