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教科書の出典がウィキペディアでいいのか

 もう世も末である。増進堂の高校用英語教科書がウィキペディアから転載した地図を掲載し、教科書検定も通過したという。以下、毎日新聞2008/03/26朝刊より。
(前略) 検定申請したのは、大阪市の出版社「増進堂」。英語の長文に「死刑制度の世界地図」という図を付け「07年、ウィキペディア」と出典を記した。図では、死刑制度のある国や廃止した国などが色分けされている。
 検定意見を受け、出版社側は国境線を修正。文科省は「図の出典の明記を求め、不正確な個所には意見をつけている。特に(引用に)異論は出なかった」と説明している。
 ウィキペディアには、この図の基となる死刑制度の国別リストも掲載されているが「リストは不完全」などと書かれている。25日現在、ネット上の図は教科書転載の図とは異なり、韓国やラオスなどが「死刑のある国」から「事実上廃止された国」に変わった。
 編集部は「人権団体の資料と照らし合わせ、図は正しいと確認した。引用は問題ないと思うが、学校現場の反応を見て作り直すことも検討する」としている。(後略)
 私は執筆・編集の個人責任が不明瞭であるウィキペディアに一貫して反対の立場をとっている。とにかく細部に誤りが多く、典拠も示されないことが珍しくない。これが個人のホームページならば「個人的見解」で済むが、仮にも「事典」と名乗っている以上、何よりも客観的な正確さと学術的な専門性が必要なはずである。故に当ブログでは今日までウィキペディアを参照リンクとして挙げたことはなかった。
 今回の「死刑制度の世界地図」は一見すると正確なようだが、「書きかけの項目」と明記しているように、項目内容は不完全である。そんな代物を教科書に転載してしまうことに、教科書執筆者や編集者は疑問を持たないのだろうか。教科書に載ることで子どもたちがウィキペディアの「信憑性」を誤信してしまいかねない。

 なお以前日本史教科書の件でも繰り返し述べたが、文部科学省の教科書検定が記述内容の学問性を担保できないことは今回の一件でも明らかだろう。事実上の検閲で言論・表現の自由を侵し、子どもが学問に立脚した教育内容を学ぶ自由も侵している現行の教科書検定制度は廃止するべきである。行政の検定がなくなることで、むしろ教科書発行者の責任が明確になり、専門家の裁量も広がる。検定の唯一の正当性である「客観性の担保」がもはや崩壊している以上、検定廃止は必然である。

【関連記事】
教科書調査官の系譜~「さるのつぶやき」より

【関連リンク】
教科用図書検定規則(平成元年4月4日文部省令第20号)-文部科学省
教科書一覧|高校英語教科書|馬のマークの増進堂・受験研究社
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by mahounofuefuki | 2008-03-26 11:36


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