労働運動の未来

 以前、東京新聞「ハケンの反撃」を読んでというエントリで、私は「資本主義初期の工場法制定前の奴隷労働同然になっている現状を変革するエネルギー」は、個人加盟型ユニオンのような「新しい労働運動からしか生まれないだろう」と書いたが、改めてそれを確信するニュースがあった。
 まず、中日新聞(2008/03/07 08:24)より。
 トヨタ自動車の工場で作業中に急死した内野健一さん=当時(30)=の過労死をめぐり、名古屋地裁で過労死認定を勝ち取った健一さんの妻博子さん(38)に対し、豊田労働基準監督署は6日、QC(品質管理)サークルなどの活動を業務と認めて遺族補償年金と葬祭料を支払う決定をした。同労基署側は地裁判決の後、QC活動を残業と認めずに支給額を算出するとしていたが、「(業務と認めた)判決を尊重した」と姿勢を一転させた。遺族年金の支給額は、健一さんが死亡する直前3カ月(2001年11月-02年1月)の平均賃金を基準にして算出される。(後略)
 当ブログでも裁判所の判決を無視する労基署~トヨタ過労死というエントリを上梓し、名古屋地裁が過労による労災を認定する判決を下し、国が控訴せず判決が確定したにもかかわらず、豊田労基署がトヨタに恐れをなしてか判決に反して残業時間を過少に算出し、遺族補償金を出し渋っていたことを紹介したが、ようやく判決に従ったわけである。
 このトヨタ過労死問題の過程で、トヨタ自動車の御用労組は何一つせず、経営側の言いなりに死んだかつての同僚を見捨てた。中心となって闘ったのは全トヨタ労働組合(ATU)のような新しい雇用形態横断型のユニオンだった。今回トヨタの腰巾着である豊田労基署を動かしたのは、まさに「新しい労働運動」だったと言ってよい。同時に、既成のメディアが覆い隠すトヨタへの憤懣の声がインターネットで溢れかえっていたことも影響しただろう。もはや労使協調型労組に未来がないことははっきりしている。

 もう1つ、奇しくも同じ豊田労基署関連のニュースがある。共同通信(2008/03/07 06:41)より。
 豊田労働基準監督署(愛知県豊田市)は6日、日本マクドナルドの元店長で愛知県内の50代の男性が脳梗塞などで倒れたのは、長時間の残業など過重な労働が原因だったとして、労災を認定した。
 同労基署は勤務記録などから月80時間以上の残業が続いていたと認めた。
 支援する日本マクドナルドユニオンなどによると、男性は1982年に入社。豊田市でマクドナルドの店長として勤務していた2004年11月に大動脈瘤と脳梗塞を発症した。
 男性は昨年1月、豊田労基署に労災を申請。脳梗塞発症前の残業時間について、マクドナルド側は1カ月当たり55時間から67時間前後と主張。これに対し男性は「2店舗の店長を兼務していた時期もあり、月百時間以上だった」と訴えていた。
 マクドナルドと言えば、1月に直営店の店長が偽装管理職による残業代不払いの不当性を訴え、東京地裁が原告勝訴判決を下した(マクドナルド残業代不払い訴訟で勝訴判決参照)。マクドナルド側が控訴したためまだ係争中だが、今回労基署が残業時間の算定において会社側の主張を退けたのは東京地裁判決が影響していると考えられる。
 企業が残業を行わせる時にはできるだけ合法に偽装しようとする。マクドナルドの場合もタイムカードを改竄せざるを得ないように仕向けるような労務管理を行っている。労働行政においてはそうした会社側のやり口を断罪する姿勢が必要である。
 ここでも日本マクドナルドユニオンが闘いを支えた。マクドナルドのような正社員比率が低く、長年労組が存在しなかったような企業では、ますますユニオンの拡大が望まれる。日本の労働運動は今、大きな岐路に立たされていることは明らかだ。

 成果というにはあまりにも小さな動きだし、過労死した人が生き返るわけでも、病気がよくなるわけでもない。しかし、現在の労働環境がもはや「泣き寝入り」することもできないほど追いつめられている以上、こうして局地的でも闘うほかないことをこれらの事例は示している。私は改めて日本の労働運動の未来をユニオンに託したい

【関連リンク】
全トヨタ労働組合(ATU)
日本マクドナルドユニオン
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by mahounofuefuki | 2008-03-07 12:39


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