私が禁煙派なのにたばこ増税に反対する理由

 日本学術会議がたばこ税の大幅引き上げを厚生労働省に提言した。以下、毎日新聞(2008/03/05朝刊)より。
(前略) 学術会議は、たばこの規制に関する分科会(大野竜三委員長)で、06年6月から検討してきた。提言では自動販売機の設置禁止、喫煙率削減の数値目標設定のほか、たばこ税(1箱当たり189円)を現在の2倍程度にすることの検討を求めた。この場合、年間消費量は現在の約2700億本から4分の1減少、喫煙者数は少なくとも200万人減少すると試算した。一方、税収は年間約2兆3000億円から約1兆2000億円増えるという。(後略)
 私はたばこを吸わないだけでなく、日頃の実生活で嫌煙権を主張しているくらいなので、日本学術会議が主張する「脱タバコ社会」という目標そのものには全く異論がない。たばこ自動販売機の設置禁止も未成年の喫煙を防止する上で必要だと考えている。

 しかし、たばこ税の増税はいただけない。禁煙派は一般にたばこ増税には無条件で賛成する人が多いが、私は一貫して反対している
 「税が無駄遣いされるから」ではもちろんない。私が基本的に「大きな政府」論者であることは、当ブログの税制や社会保障関係の記事にいつも書いている通りである。私がたばこ税の増税に否定的なのは全く別の理由からである。

 それは喫煙の本質が「依存症」である以上、いくらたばこの価格が上がっても重度の喫煙者がたばこをやめることはないからである。本当のヘビースモーカーはたとえ価格が倍になったところで喫煙をやめることなどできない。ニコチン依存症とはそれほど重い「病気」だからだ。
 たばこ増税論はあくまでも喫煙者=ニコチン依存症患者がたばこをやめないことを前提に、税収を増やそうとする方策である。いわば病人の弱みにつけ込んだ懲罰的な徴税である。税は年貢ではない。税を負担する以上は、当然見返りがなければならない。現在のたばこ税では納税者たる喫煙者に何も恩恵はない。

 むしろ財政に求めるべきは、ニコチン依存症治療促進のための歳出増大である。現在、禁煙は専ら個人の「自助努力」に委ねられている。しかし、本当に「脱タバコ社会」を目指すならば、いつまでも喫煙者任せにはできない。喫煙者が積極的に依存症を治せるよう、財政支出を増やさなければならない。具体的には禁煙治療への医療費助成や保険適用範囲の拡大である。
 ちなみにたばこ税をその財源に使うことはできない。それでは喫煙減少のための財源を増やすために、喫煙を増やすという二律背反になってしまうからだ。たばこ税の税収が大きくなるほど、喫煙者を減らす財政上の必然性がなくなってしまう。故に真の禁煙派はたばこ増税に反対しなければならない。

 禁煙派はたばこに対する憎悪のあまり、つい喫煙者への差別と懲罰に傾きがちだが、喫煙者はあくまでも治療が必要な病人であることを考慮してほしい。私は本気で喫煙習慣を撲滅したいからこそ、たばこ税の増税に反対し、喫煙者の禁煙治療に対する財政出動の強化を求める。

【関連リンク】
要望 脱タバコ社会の実現に向けて-日本学術会議*PDF
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by mahounofuefuki | 2008-03-05 17:22


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