「せんたく」の唱える「地方分権」に要注意

 北川正恭氏や東国原英夫氏らの「せんたく」と連携する議員連盟が発足することについて、なぜかネット言説ではあまり重視されていないようで、私のアンテナが狭いせいもあるだろうが、これを問題視している人が少ないように思う。
 しかし、「せんたく」の動きは加速を続けていて、京都新聞(2008/02/21滋賀面)によれば、滋賀県の嘉田由紀子知事も参加するようである。「もったいない」のワンフレーズで市場原理主義に疲弊した人々を吸引した彼女の加入は「せんたく」に一層の厚みをもたせるだろう。かつての日本新党と似た軌跡をたどりつつあり、衆院総選挙が限りなく遠のきつつある状況で、無視しえない動きである。

 選挙で社民党の支援を受けた嘉田氏、本質的に歳出削減論者である北川氏、徴兵制の導入を主張する東国原氏、さらに国会議員まで広げると、一種のネオコンといっていい菅義偉氏や石原伸晃氏まで含む「烏合の衆」であり、どう見ても財政や外交や社会政策において一致点はない。前のエントリで「烏合の衆」だからこそ、権力闘争に特化した政策なき野合の「器」に適していると(ある意味自民党や民主党もそうだが)述べたが、それでも選挙においてはたとえタテマエであっても何らかの「主張」が必要である。一見バラバラな彼らをつなぎ、なおかつ有権者に好意的にアピールしうる政策は何か。

 それは「地方分権」をおいてほかにない。北川、東国原、嘉田という現職ないし前職の知事が揃っているということもあるが、すでに露骨な新自由主義を前面に押し出しにくい「空気」の中で、「地方分権」こそが「構造改革」の隠れ蓑に相応しいからである。
 私は基本的に「せんたく」の動きの背後には新自由主義政策の継続を狙う資本の動きがあると疑っているが、そこまでいかずとも、日本経団連など財界は何よりも政局の安定を欲しており、そのためには衆参両院で多数を制する政権が必要となる。民主党票を割るにせよ、自民党へ「構造改革」路線を継続するようプレッシャーをかけるにせよ、常に政界再編を意識させる政治力学を発揮する役割を「せんたく」に期待しているのではないか。

 「地方分権」と「構造改革」は「国の歳出を削減する」という点で一致する。「地方のことは地方に任せる」という「地方分権」と、「民間にできることは民間に任せる」という「構造改革」の類似性に着目しなければならない。
 要するに、一見聞こえが良い「地方分権」というスローガンの実態は、国の責任放棄であり、ただでさえ財政赤字に苦しむ地方自治体への丸投げであり、結局は「構造改革」と変わらない「弱い者いじめ」にしかならない可能性が濃厚である。「地方分権」を口実に行われた小泉政権下の「三位一体の改革」が、結局のところ国の地方への財政支出削減に終わったことを忘れてはならない。
 おそらく嘉田氏や東国原氏は「地方分権」が「構造改革」の隠れ蓑になるなど露知らずに「せんたく」に参加したのだろう。当事者もよくわからないまま新自由主義に操作されているような気がする。当事者でさえそうなのだから、有権者がイメージ操作に流される危険性はもっと高い。

 「せんたく」が選挙前の政界再編を狙って新党結成までいくのか、それとも選挙後の政界再編を睨んで自民・民主両党のシンパ議員を推薦するにとどまるかは、現状では何とも言えないが、「せんたく」には今後石原伸晃つながりで東京都の石原慎太郎知事や、東国原つながりで大阪府の橋下徹知事が参入することもありえよう。船頭には事欠かない。
 私は「できれば民主党左派、共産党、社民党による護憲連合政権を望みたいが、実現性は限りなく低いので、当面は組織がしっかりしている共産党の力を伸ばし、現行政府に対し所得再分配と労働基本権を確立するようプレッシャーをかけるしかない」という考えなので、自民党や民主党がどうなろうと知ったことではないが、自公政権の打倒を目指している人々が「せんたく」のような動きに取り込まれるのも面白くない。用心するに越したことはない。それが私の思いすごしならば、私が嘲笑を受けるだけの話である。

 念のためあらかじめ忠告する。「せんたく」が唱える「地方分権」には要注意すべし。

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低気温のエクスタシーbyはなゆー:嘉田由紀子・滋賀県知事が「せんたく」に参加へ
*嘉田氏の「せんたく」参加の件についてはこの記事にご教示を受けた。
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by mahounofuefuki | 2008-02-23 13:56


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