民主党は「構造改革」を継承する気か

 昨年の参院選で自民・公明両党が大敗したのは、小泉・安倍政権下の「構造改革」という名の生活破壊政策に対する民衆の不満が爆発し、民主党が唱えた「生活第一」というスローガンに一定程度期待が寄せられたからにほかならなかった。
 しかし、選挙後の臨時国会で、民主党は最低賃金法改正であっさりと公約を捨てて与党の軍門に下り、その「生活第一」を実現する意欲を疑わせた。さらに昨年末には民主党税制調査会が「税制改革大綱」で、消費税の社会保障目的税化を前提とした引き上げを示唆し、これは党のシャドーキャビネットも了承した。民主党の信者以外の誰もが、これでは自民党とほとんど変わらないと考えざるをえない状況が続いている。
 そして昨日、民主党はついにルビコン川を渡ってしまったことが明らかになった。以下、時事通信(2008/02/07 15:11)より(太字強調は引用者による)。
 民主党は7日の予算調査会で、党の財政運営の基本理念をまとめた「予算機能転換法案」の要綱を決定した。消費税率を据え置く一方、徹底した歳出削減に取り組むことで、国の一般会計単独でプライマリーバランス(基礎的財政収支)の2011年度黒字化を目指す。政府・与党よりも高い目標を掲げ、財政再建に向けた強い姿勢を打ち出した。
 民主党は同法案を「政権取得後のマニュフェスト(政権公約)的な予算案」(中川正春「次の内閣」財務相)と位置づけ、今国会に提出する方針。ただ、財源確保の面であいまいな点が多く、説得力のある歳出削減策を打ち出せるかが今後の大きな課題となる。
 基礎的財政収支は、借入金を除いた歳入から借入金返済に関する費用を除いた歳出を差し引いて算出され、政策経費などが借金に頼らずに賄えているかを示す指標。国の一般会計の場合、08年度は5.2兆円の赤字になる見込みだ。政府・与党は、国の赤字を地方の黒字が穴埋めする形で、国・地方合計で11年度の黒字化を目指しており、「国の一般会計単独での黒字化」を掲げた民主党案の方がより厳しい財政改革が必要になる。
 民主党が2011年度までのプライマリーバランスの黒字化を目指す予算機能転換法案を準備していることは、すでに先月報じられていたが(共同通信2008/01/22 13:45など)、今回の決定で民主党が当面は歳出削減路線を強化する方針がはっきりしたと言えよう。これまで政府の経済財政諮問会議が行ってきた路線と同じであり、国が行うべき仕事を放棄する「小さな政府」の立場である。
 消費税の税率を据え置くとしているが、先の「税制改革大綱」でも税率の引き上げは消費税の社会保障目的税化を実現してからと明示し、当面は「消費税率は現行の5%を維持した上で、税収全額相当分を年金財源とする」と述べており、両者に矛盾はない。つまり歳出削減路線を採るからと言って、消費税増税路線を放棄したわけではないことを意味する。そこを見誤ってはならない。

 山口二郎氏が最近消費税増税も視野にした福祉国家論をしきりに唱えていたのは、おそらく民主党の歳出削減路線を採用する動きに対する牽制の意味合いがあったのだろう。しかし、消費税増税では歳出削減に対する牽制には決してなりえない。なぜなら歳出削減論者は根本的に消費税増税を否定しておらず、むしろ消費税増税の露払いとして歳出削減を行っているからである。そして消費税増税も歳出削減も「庶民いじめ」という点では全く同じである。
 政府はすでに福田康夫首相が再三消費税引き上げを示唆しており、自民党内の議論は消費税増税の可否ではなく、消費税引き上げを既定とした上で、年金の保険料方式を維持するか、税方式をどの程度導入するかといった段階に移っている。新自由主義の巣窟と目される経済財政諮問会議も、昨年来とっくに消費税増税の世論操作を始めている。そんな状況で民主党が歳出削減を前面に打ち出すのは、小泉・安倍時代と所入れ替わり、まるで民主党が「構造改革」路線を継承するようなものである。それが参院選の民意と矛盾するのは言うまでもない。

 消費税増税路線も歳出削減路線も「貧困と格差」を解消する方向性をもっていないことは明らかである。必要なのは、歳入においては逆進性の是正と累進性の回復、歳出においては削減ではなく配分の変更である。
 なお、私は以下の財政論を支持している。
 全国商工新聞 第2816号 私たちの主張-全商連(太字強調は引用者による)
(前略) 消費税に頼らなくても財源はあります。資本金10億円以上の大企業の経常利益はバブル期のピークだった1990年度の18・8兆円から2006年度には32・8兆円と史上最高を記録しました。しかし、税負担は13・9兆円から13・7兆円とほぼ同水準にとどまっています。法人税がかつては40%以上だったのが、現在30%に引き下げられた上に、連結納税制度、研究開発制度など大企業に有利な減税制度によるものです。
  法人税を当面、消費税導入前の40%にもどせば5兆円以上の財源が生み出せます。現在40%である所得税の最高税率を引き上げることも必要です。また、利権にまみれて水増しが横行している5兆円もの軍事費、毎年300億円も支給されながら使い切れない政党助成金など、見直しするべきところはたくさんあります。いま問題となっている道路特定財源を一般財源化することや、10年で59兆円も使うことが決まっている道路計画も再検討することが必要です。(後略)

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by mahounofuefuki | 2008-02-08 17:29


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