日本マクドナルドの直営店の現職店長が、店長を労働基準法第41条の「管理監督者」とみなして残業代を支払わないのは違法だとして同社を訴えていた訴訟で、東京地裁は過去2年間の残業代支払を命じる判決を下した。
店長が管理職かどうかをめぐっては、先日紳士服大手コナカでも店長の残業代支払いを求めていた労働審判が、会社側が和解金を支払うことで合意したが、今回の判決は、管理職の実態がない労働者を管理職に仕立てることで残業代を支払わない企業の手口を断罪した点で、より明確に企業に反省を促したと言えよう。 この訴訟の提訴から今日までの動きやマクドナルドの労働現場の実態については、OhmyNewsの永原一子さんの記事が詳しいので(下記の「関連リンク」参照)、ぜひそちらをお読みいただきたい。 今回の訴訟で注目しなければならないのは、原告が東京管理職ユニオンとともに会社側と団体交渉を行った際、会社側は金銭解決を提示したが、原告はこれを断固拒否して、訴訟に至ったことである。しかも退職せず、あくまでも現職の店長として仕事を続けながら、会社と闘うことがどれだけ厳しいかは想像に難くない。「カネ目当て」という周囲の中傷とも闘い、自己の権利の追求を貫いた原告の意思の強靭さに素直に敬意を表したい。 訴訟の直接の論点はマクドナルドの店長が管理職かそうでないかだが、むしろ問題は月100時間超の「サービス残業」を強いる企業の働かせ方そのものだろう。外食産業の店長やマネージャークラスの社員の過労はつとに指摘されているが、最小限の人員に過重な仕事を担わせ、極端な能力・成果主義で心身を疲弊させる労務管理が、果たして本当に会社のためになっているか大いに疑問だ。数字上のコストカットを至上命題にするあまり、結局は労働の効率性をかえって低下させているとしか思えない。 マクドナルドの店長たちのほとんどが、タイムカードの出退勤の時間を改竄してまで残業をしているという。表向きでも定時内に仕事ができなければ「個人の能力不足」とみなされ、能力主義の査定で低く評価されるからだ。特に2006年夏ごろからは「能力不足」の烙印を押された店長やアシスタントマネージャーの降格が目立つようになったという。そこまでして仮に「利益」を上げても労働者には還元されることはない。労働者に待っているのは病気と「過労死」だけである。 この種の訴訟は過去に何度もあり、勝訴も今回が初めてではない。それにもかかわらず一向に労働環境が改善されないのは、労働基準法が全く機能していないことに起因する。労働行政の強化が何としても必要だ。同時に改めて本当に労働者のためになる労働組合の必要性も痛感した。競争原理で同じ職場の労働者間の連帯が困難になっている現状で、従来の企業内労組を前提にした労働運動ではほとんどの労働者がそこから疎外される。地域ユニオンや職種別労組の伸長に期待したい。 しかし、いつも言っていることだが、なぜ過労問題は政治課題にならないのだろう? ガソリン税の税率なんかよりもずっと切実なのだが・・・。 【関連リンク】 マクドナルドの「店長」は管理監督者か-OhmyNews マクドナルド直営店店長が過労死か?-OhmyNews マクドナルド裁判は原告店長の全面勝訴-OhmyNews 東京管理職ユニオン 労働基準法-法庫
by mahounofuefuki
| 2008-01-28 21:54
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