ドクターズユニオン結成へ~立ち上がった勤務医と医師不足問題

 花・髪切と思考の浮遊空間の記事で知ったのだが、勤務医を中心としたグループが医師の労働環境改善を目指して新たな医師団体の結成を計画しているという。
 共同通信(2008/01/13 19:39)や朝日新聞(2008/01/14朝刊)などによれば、「全国医師連盟設立準備委員会」というグループで、勤務医や研究医など現在約420人が会員となっているという。1月13日には東京ビッグサイトで総決起集会が行われた。今年5~7月に「全国医師連盟」の設立を目指す。既成の代表的な医師団体である日本医師会が開業医中心であるため、それとは異なる立場から問題提起を図るという。特に勤務医の過労や医師不足の解消を訴えており、医師の労働組合の結成も準備しているようだ。

 実のところ医療問題はあまりよく知らない分野で(今まで幸いにも入院や大きな手術をしたことがないため)、故にこれまでブログできちんと取り上げたことはなかったが、社会保障の再建や長時間労働の是正は私が最も重視する問題であり、少しは勉強しなければならないようだ。ちょうどタイミングを合わせるように今月発売の『世界』2月号が医療崩壊問題を特集しており、メモを兼ねて情報をまとめておこう。

 全国医師連盟設立準備委員会のホームページによれば、「新組織は、いかなる政党、宗派とも独立した組織です。大学や学会や病院などの既存の権威に依存しない、あくまでも現場の医師達の組織です」と自己規定している。
 また、同HPには「檄文」が掲載されている。そのうち「当面の行動」と題する文書を引用する(太字は引用者による)。
全国医師連盟は、
1 医療労働環境改善のために、個人加盟制の医師職労働組合ドクターズユニオンを創設すると共に、厚労省、公共団体、病院管理者に労働基準法遵守の指導を徹底させます。
2 医療報道の是正と世論への啓発のために、記者向けの医療事案解説サービスを設置し、迅速なプレスリリースや医療記事の誤報訂正などを働きかけ、より公正な報道を導きます。
3 医療過誤冤罪を防止し、同時に医師の自浄作用を発揮させるため医師関連団体に働きかけ、また法曹関係者等と協同してこれらの活動を行います。
4 適正な医療費の公的扶助を実現するため、国の医療費抑制政策を転換させ、公共の福祉の向上と共に、診療経営を防衛します。

我々は、医師と医療の真の社会貢献をめざします。
患者と医師が協同して、病気の治療にとりくむ、最善の医療環境をめざします。
 医療過誤問題については、事実さまざまな事件が起きており、「自浄作用」による「冤罪防止」という立場については保留したいが、政府が続けている医療費抑制政策は全面的に廃止するべきだと私も考えており、医師の労働条件改善も理解・支持できる。
 「ドクターズユニオン」構想は、まさに各地の個人加盟型労組である地域ユニオンの医師版であり、ここでも政治団体化した既成の圧力団体(労組の場合は連合など、医師の場合は日本医師会)とは異なる、本当に加盟者の権利を守る組織への希求が読み取れる。
*ただしOhmyNewsによれば、同会の代表世話人である黒川衛氏は「医師会と対立する見解も部分的にはあるが、全面対立するものではない」と注意しており、いわゆる「医師会への反乱」と位置づけることはできないだろう。企業内で御用組合と闘う少数組合とは異なるようだ。

 現在日本の医療における最大の問題は医師不足であろう。勤務医の労働条件悪化の第一の要因もここにある。日野秀逸「医療費抑制政策からの転換を」(『世界』2008年2月号)が日本の医師数について国際比較を行っている。以下、同論文による。
 日本国内の医師総数は約26万人。WHO「ワールド・ヘルス・リポート2006」付録「加盟国における保健労働者の国際比較」によれば、人口10万人あたりの医師数は198人、加盟192カ国の第67位である。ちなみにヨーロッパで最も低水準のイギリスで230人、他の西欧・北欧諸国は軒並み300人台で、イタリアは420人、ロシアは425人である(以上、2002年当時)。
 また、OECDの調査によれば、2003年現在のOECD加盟国における人口10万人あたりの臨床医師数の平均は約300人、日本(2002年、04年)は約200人となっている。日本の人口に当てはめると、臨床医師がOECD平均より12万7000人以上も不足しているという。
 統計によって数字に開きがあるようだが、「先進国」で日本の医師数が最低水準なのは間違いないところだろう。

 医療は教育や福祉とともに「構造改革」によるダメージを最も受けた分野である。今回勤務医たちが声を上げたのを機に、医療のあるべき姿について真剣に考えなければならないだろう。

【関連リンク】
「医療崩壊阻止し、医師の新時代を」-OhmyNews
全国医師連盟設立準備委員会
日経メディカルオンラインブログ 本田宏の「勤務医よ、闘え!」
勤務医の「反乱」をどうみる。-花・髪切と思考の浮遊空間
社会保障と「分断」-勤務医の「反乱」再論-花・髪切と思考の浮遊空間
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by mahounofuefuki | 2008-01-15 23:14


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