「野党共闘」の終焉と「護憲の大連立」構想

 第168回臨時国会は新テロ特措法案の衆議院再可決による成立をもって事実上閉幕した。
 今国会は昨年9月10日に開会したが、その時の首相は安倍晋三氏だった。周知の通り安倍氏は所信表明演説のみを行って突如退陣し、変わって福田康夫内閣が発足した。たった4か月前のことなのに、はるか昔の出来事のように感じる。当時も国会終盤も最大の争点は新テロ特措法であった。原油価格の異常な高騰による灯油やガソリンの急騰に苦しむ人々を尻目に、インド洋で軍事行動を展開するアメリカ軍などへの給油支援を行う現政府の暴挙は許し難い。福田首相は昨日(1月11日)、再可決が「暴挙」ならば何が「暴挙」でないのかと開き直ったと報じられているが、再可決という方法以前に、この特措法の内容そのものが前代未聞の暴挙であることを自覚していないらしい。

 昨日のもう1つの暴挙は民主党の小沢一郎代表が衆院本会議を途中退席し、新テロ特措法案の採決に際して棄権したことである。この件について小沢氏の国会軽視に対する批判や、本音では特措法に賛成しているのではないかという疑念が各方面から指摘されているが、私にはむしろ参院での法案採決をめぐって、当初民主党が主張していた継続審議が他の野党に受け入れられず、結局議決を行ったことに対し、野党間の根回しすら自分の思い通りにならないことに苛立った小沢氏が、へそを曲げふて腐れた結果の幼稚な行動に思える。
 小沢氏は参院であえて採決を行わずに継続審議とし、与党に「60日規定」による衆院再可決を行わせ、与党のイメージダウンを狙ったのだろうが、防衛利権問題を十分に責めることができなかった今となっては成立日が1日違うだけで無意味である。逆に民主党が特措法に明確に反対しなかったという「汚点」になっただろう。額賀財務大臣の証人喚問問題の時もそうだったが、民主党は野党第1党としての驕りからか、他の野党と十分な協議をせず、他党に対し「黙ってついてこい」というような姿勢があった。
 今国会の会期中、小沢氏は福田首相と密室で連立を話し合い、すでに「野党共闘」を破壊しつつあったが、昨日の小沢氏の退席は名実ともに「野党共闘」を終焉させ、「政界再編」への意思を示したような気がしてならない。

 昨年の参院選の民主党の「勝利」は、民主党の政策が支持されたというよりも、自公政権に対する拒絶と政権交代への期待の意思が民主党に集まった結果であった。
 しかし、あえて断言するが、次期衆院選まで民主党は結束を固め続けることはできない。少なくとも小沢氏には現行の民主党の体制のままで総選挙を迎える気はまったくない。
 小沢氏は「大連立」をめぐる騒動が収束した後も、ことあるごとに自民・民主両党の連立を正当化してきた。今の民主党では勝てないというのが表向きの理由だが、実際は共産党や社民党などと組みたくないというのが理由であろう。最近の選挙予測報道はどれも民主党の勝利を予想するが、単独過半数を獲得できる保証はなく、その場合どこと連立するかが問題になる。小沢氏は今国会で改めて現在の野党と組んだのでは自分の思い通りには政権運営できないことを悟っただろう。むしろ政策的に近い(というより同じ)自民党の一部との連携を模索したいはずだ。
 対米追従、巨大企業優先、政官財談合の自民党政治からの脱却を求めて民主党を支持した人々の期待は、次の総選挙までに完全に裏切られるだろう。

 それでは自民党政治を否定し、福祉国家と平和主義を期待する人々は次の衆院選でどう行動するべきなのか。
 この問題について、関西学院大学教授の豊下楢彦氏が北海道新聞(2008/01/09夕刊)で、自民党とかつての自民党出身者による近い将来の「大連立」を予測した上で、「今日の日本政治の深刻な問題は、いわゆる右派の糾合に対抗する左派の“受け皿”が存在しないことにある」と指摘している(太字は引用者による、以下同じ)。豊下氏はさらに次のように続ける。
(前略) 一般の国民、とりわけ若い世代にとっては、共産党と社民党がなぜ一致結束した行動をとることができないのか、全く理解できないであろう。ともに「護憲の党」を名乗り、政策的にもきわめて近い両党が、院内統一会派もつくれず選挙協力もできないという事態は、若い世代からすれば「現代の七不思議」と言っても過言ではないであろう。仮に両党の代表が公の場で、なぜ一致結束して行動できないかについて議論するならば、おそらく多くの国民は、つまらぬ“過去のしがらみ”に今なお囚われている両党の状況を知って、あきれ果てることなるであろう。
 両党の最大の問題点は、ともに政権戦略を持っていないところにある。つまり、いかに多数派を形成して政権を担うか、という戦略構想を保持していないのである。来るべき政界再編や「大連立」の可能性を展望するとき、両党は、こうした動向を批判するばかりではなく、なによりも自ら多数派戦略を国民の前に提示しなければならない。政界再編によって民主党が分裂することを予想するならば、“左派民主党”と共産党、社民党が「護憲の大連立」を形成するような大きな戦略構想を描き出すべきである。(後略)
 豊下氏の念頭にあるのは、イタリアのかつての中道左派連合「オリーブの木」構想だと思われるが、この構想自体は1990年代から幾度となく語られたにもかかわらず、今もって実現には至っていない。
 ただ実現性の可否を別とすれば、福祉国家と平和主義を希求する人々にとっては、この「護憲の大連立」こそベターな選択肢であり、「民主党中心による政権交代」という構想が破綻しつつある現在、小沢氏が民主党を割る前に、民主党の「左派」を引き付けるための「受け皿」を共産党や社民党が用意するというのは、少なくとも方向性としては間違っていない。
 残念ながら「豊下構想」には実現可能性の問題以外の重大な弱点があるのだが、今回の記事で書くには長くなりすぎるので、その件を含めて「左」の結集と拡大のためのハードルについては稿を改めて近日中に書きたい。

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by mahounofuefuki | 2008-01-12 17:08


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