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文部科学省はやはり「軍の強制」を認めなかった~「追いこまれた」と「強いられた」の差

 沖縄戦における住民の「集団自決」をめぐる高校用日本史教科書の検定に関し、教科用図書検定調査審議会が教科書会社側の訂正申請を受理し、文部科学大臣に報告した。
 共同通信(2007/12/26 15:25)や朝日新聞(2007/12/26 15:06)は「軍の強制」の記述が「事実上」認められたと報じたが、これに対して沖縄タイムスや琉球新報は号外を出し「軍の強制」が認められなかったと報じ、時事通信(2007/12/26 17:33)も「軍による『強制』『強要』などの表現は認めなかった」としている。検定結果に対する反応がメディアによって全く異なるので混乱している人も多いだろう。
 今回の訂正結果を含む各教科書の記述の変遷は沖縄タイムスの電子号外2面が詳しいので、それぞれ自身の眼で参照してほしい。
 沖縄タイムス 号外 教科書検定による「集団自決」記述の変遷*PDF

 結論から言うと、文部科学省は結局「軍の強制」を認めなかった
 日本軍に「自決」を「強いられた」「強制された」といった記述を認めず、日本軍の「関与」によって「自決」に「追いこまれた」「追いやられた」といった記述に変えさせた。春の検定意見では日本軍の「関与」すら一切認めなかったのに比べれば、少しはましになったと言えるが、文部科学省側は「軍の強制」という記述には頑なに抵抗した。
 教科書執筆者の尽力で、日本軍という主語が復活し、特に実教出版は「強制的な状況」という記述を通したが、それでも「強いられた」ではなく「追い込まれた」という以上、軍が「自決」せざるをえない状況は作ったが、あくまでも「自決」そのものの契機は住民にあるという解釈が可能になる。文部科学省は、軍が「自決」を強いたという通説をどこまでも否定しようとしているのである。

 沖縄戦研究の第一人者である関東学院大学教授の林博史氏は「研究者としても、これまでの研究成果を反映していないどころか否定した検定で、受け入れられない」と今回の訂正を批判している。沖縄の人々もこれでは容認できないだろう。
 また、教科書検定過程に加えて、今回の訂正申請過程も不透明なことが多い。表向きは教科書会社の訂正申請を審議会が受理したという建前になっているが、事前の相次ぐ報道の通り、訂正申請の内容に教科書調査官が深く介入したことは間違いない。昨年来の検定の全過程を徹底的に検証する必要があるだろう。

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【関連リンク】
教科用図書検定規則-文部科学省
高等学校歴史教科書に関する検定結果(平成18年度)-文部科学省
教科書検定の手続-文部科学省
沖縄戦「集団自決」問題-沖縄タイムス
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by mahounofuefuki | 2007-12-26 20:20


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