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「防衛省改革会議」に「改革」はできない

 「防衛省改革会議」の2回目の会合が今日(12月17日)開かれた。
 この会議は、海上自衛隊の補給艦「ときわ」がインド洋で行った給油量を実際より少なく報告していた問題と、同じくインド洋で給油活動に従事していた補給艦「とわだ」の航海日誌が防衛省の内規に反して破棄された問題を契機に、首相官邸に設置されたもので、すでに12月3日に1回目の会合が行われている。
 1回目の会合では、①文民統制の徹底、②厳格な情報保全体制の確立、③防衛調達の透明性確保の3点を会議の主題とし、来年2月頃に検討報告をまとめることを確認したが(朝日新聞 2007/12/03 12:12)、2回目の今日は福田康夫首相も出席し、自衛隊に対するシビリアンコントロールについて意見交換が行われた。
 以下、東京新聞(2007/12/17 夕刊)より。
(前略) 首相は冒頭、「問題の原因の多くは、防衛省・自衛隊の業務の在り方の基本にかかわっている。出直しのための改革にとって最良の基本的方向性を大所高所から提言してほしい」と述べた。
 会議では、海上自衛隊による給油量訂正隠ぺい問題について「責任の所在が明らかでない。この機会に、防衛省の組織、責任体制の在り方の抜本的見直しが必要」という指摘が出た。
 また、防衛調達の透明性を議論するため、同省OBら調達にかかわったことがある専門家を招いた勉強会を年明け以降に開くことで合意した。
 新テロ特措法案の審議過程で明らかになった給油量虚偽報告問題と航海日誌破棄問題は、すっかり守屋武昌前事務次官の汚職をめぐる軍需利権問題の陰に隠れてしまっているが、今も全容解明に至ったとは言い難く、疑惑の核心は依然藪の中である。虚偽報告も日誌破棄も現場レベルで行われ、政府や防衛省上層部に伝わっていなかったことが問題とされているが、むしろ自衛隊が給油した燃料をテロ特措法に反してイラク戦争に転用した証拠を意図的に隠滅したのではないかという疑惑こそ本当の問題であり、「改革会議」が真にシビリアンコントロールの確立の徹底を目指すなら、この証拠隠滅疑惑こそ追及しなければならない。
 しかし、1回目の会合の資料と今日の報道を読む限り、「改革会議」はあくまでも意図的な隠蔽とは捉えず、問題の所在を単なる官僚機構の責任体制の在り方にすり替えており、私たちの疑念に応える意思はまったくないらしい。こうした会議は年金記録検証委員会の例を見るまでもなく、「政府が改革に取り組んでる」という姿勢をアピールするためのパフォーマンスでしかなく、おそらく当たり障りのない「改革案」を提言して幕を閉じるだろう。まったく税金の無駄でしかない。

 そもそもこの「防衛省改革会議」は、首相官邸主導を強調するために、防衛大臣ではなく、内閣官房長官の直轄の下に置かれてはいるが、人選からして政府の「やる気」を疑わせる。
 構成メンバーは以下の通りである(内閣官房長官「防衛省改革会議の開催について」より)。
五百籏頭 眞(防衛大学校 学校長)
小島 明(社団法人日本経済研究センター 会長)
佐藤 謙(財団法人世界平和研究所 副会長)
竹河内 捷次(株式会社日本航空インターナショナル常勤顧問)
田中 明彦(東京大学大学院情報学環 教授)
御厨 貴(東京大学先端科学技術研究センター 教授)
南 直哉(東京電力 顧問)
 現在の肩書だとわかりにくいが、佐藤氏は元防衛事務次官、竹河内氏は元統合幕僚会議議長であり、いわゆる「背広組」と「制服組」の元トップで、防衛省の「身内」である。五百籏頭氏、田中氏、御厨氏はいずれも実績のある政治学者だが(私も学生時代に彼らの現代政治史の研究書を読んだ)、自民党タカ派に近いと目され、防衛省・自衛隊に対してとても厳しいことを言えるような人々ではない。しかも五百籏頭氏は現職の防大の校長である。また、佐藤氏と田中氏は、安倍政権が現憲法下での集団的自衛権の行使を容認するために設置した「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」のメンバーでもあった。「外部の第三者」と言えるのは、日本経済新聞出身の小島氏と東京電力生え抜きの南氏だけだが、この2人は安全保障問題に関しては「素人」であろう。
 防衛省の「身内」と軍事の「素人」で構成される「防衛省改革会議」にとても「改革」などできるはずがない

 こうなるとやはり国会が国政調査権を最大限に使って疑惑を追及するほかない。参議院での新テロ特措法案の審議は問題が拡散し、政局の道具になっているのが現状だが、単に給油を再開するかどうかという矮小化された議論ではなく、政府・防衛省・自衛隊全体を通した隠蔽体質を追及し、一連の疑惑の根っこにある対米追従の防衛政策そのものを俎上に上げるべきである。
 すでに国会の会期が延長され、新テロ特措法案の時間切れによる再議決が可能になってしまった以上、審議の中身で勝負するしか野党に活路はない。与野党逆転の今こそ機を失ってはならない。

【関連リンク】
防衛省改革会議-首相官邸
防衛省改革会議の開催について*PDF
安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会の設置について-官房長官記者発表
by mahounofuefuki | 2007-12-17 17:24


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