防衛省「裏金」報道の意味

 防衛省をめぐる疑惑はもはや底なしの状態となっているが、ついに報償費を裏金としている問題が報じられた。以下、共同通信(2007/12/26 02:03)より(太字は引用者による)。

 防衛省が情報収集を主な目的とする報償費の多くを架空の領収書で裏金化して、幹部や関係部局の裁量で使えるような不正経理を組織ぐるみで長年にわたり続けていたことが判明した。防衛省OBら複数の関係者が15日、明らかにした。報償費は2007年度予算で年間約1億6400万円。裏金が職員同士の飲食経費など目的外に流用された可能性は否めず、新テロ対策特別措置法案の国会審議にも影響を与えるのは必至だ。

 政府は防衛省の報償費について「情報および資料収集、犯罪の捜査に必要な経費」と規定しており、大半は「情報収集」名目で使われてきた。

 関係者によると、裏金工作は数10年間繰り返されてきた。裏金は単年度で使い切れず、プール金は総額で少なくとも数1000万円に上るという。
 電子版ではこれだけの記事だが、共同通信加盟各社に配信された記事では、もっと詳細が記されている。それによると「裏金づくりは大臣官房などが防衛省のOBらの名前を使い情報提供の協力者に見せ掛け、偽の領収書を防衛省職員が大量に作成。具体的には、偽の情報協力者を接待したり毎月現金を手渡したかのように装う架空領収書で報償費から裏金を捻出してきた」という。また「裏金は内局に加え陸海空各自衛隊の関係部局もあり、情報収集名目の交際費などで支出、裏金を管理する「裏帳簿」も用意し原則として領収書を提出させていた」ともいう(北海道新聞 2007/12/16 朝刊)。

 情報提供者や協力者を捏造して報償費を支払ったように見せかけて官庁内部で流用するという手口は、警察の裏金問題と同様である。また使途が非公開の支出を利用した裏金づくりという点では、外務省の職員が機密費を私的流用した事件とも共通する。
 さらに使い切らなかった予算を内部でプールするという手口は、各地の自治体の裏金問題でもありふれたもので、おそらくどの官公庁でも行われている。防衛省も例外ではなかったということだ。

 さて、ここで問題になるのは、なぜこの時期に防衛省の裏金問題が報じられたのか、ということである。今回の共同通信の記事の取材元は「防衛省OBら複数の関係者」ということになっている。ちょうど守屋武昌前事務次官をめぐる汚職が捜査中であることに触発されて、防衛省の汚職体質を一掃したいOBがあえて告発したと考えるのは早計だろう。私にはむしろ裏金問題を持ち出すことで、守屋をめぐる疑惑に集中している世論や国会の視線を拡散させるねらいがあるように思われる。これ以上守屋問題を広げたくない人々(一部の防衛官僚や「国防族」の政治屋や軍需産業)が、あえて裏金というエサを用意して追及の矛先をはぐらかそうとしているのではないか。
 それというのも、過去の官庁の裏金問題はどれをとっても抜本的に解決したものがないからである。警察の裏金問題は、記者クラブ制度を通して警察と相互依存関係にある大手メディアがほとんど報道せず、結局警察庁による全国規模の組織的な裏金システムの全容解明には至らなかった。外務省の機密費問題はさんざん世論の攻撃を浴びたが、結果は田中眞紀子や鈴木宗男らトリックスターの問題にすり替えられ、これまた全容解明と全面改革には至らなかった。裏金はどの官庁にもあるため、やり出したらキリがない。防衛省の裏金問題もうやむやにできるという確信があればこそ、「防衛省OB」はわざとリークしたのではないかと私は疑っている(いざとなれば下っぱ職員をスケープゴートにすれば済む)。

 そして何よりも裏金問題は、現在防衛省をめぐる疑惑を捜査している検察当局にとってもナイーヴな問題である。各地の検察庁には調査活動費という報償費に相当する支出がある。この調査活動費が検察内部の裏金になっているのではないかという疑惑は過去に報じられた。調活費の流用を告発しようとしていた検察幹部が不可解な別件逮捕に至り、結局この問題がメディアではタブーになったことを記憶している人も多いだろう。あえて忖度すれば、今回の裏金問題のリークは防衛省サイドの検察に対する牽制の意味合いもあるような気がする。

 今のところこの防衛省の裏金問題がどう展開するか予測がつかないが(国会で取り上げられるか、全国紙が大きく報じるかどうかで決まる)、十分に注目する必要はあるだろう。
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by mahounofuefuki | 2007-12-16 12:34


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