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文部科学省はまだ「軍の強制」を弱めようとしている~「集団自決」教科書検定は訂正再申請へ

 来年度の高校用歴史教科書の沖縄戦に関する記述に対し、文部科学省が教科書検定を通して、沖縄住民の「集団自決」に日本軍の強制があった事実を否定する「修正」をさせていた問題について大きな動きがあった。

 周知の通り、9月29日の沖縄県民大会以降、教科書検定に対する非難の声が高まり、史実を改竄した検定意見の撤回を求める動きが続く中、教科書出版社各社は11月上旬、教科用図書検定規則第13条に基づき、「軍の強制」を記述に盛り込む訂正申請を行った。これを受けて文部科学省は、教科用図書検定調査審議会に訂正申請の扱いを諮問していたが、昨日になって審議会の動向が明らかになった。
 沖縄タイムス12月7日付朝刊によれば、文部科学省は12月4日、教科書出版社の担当者を呼び、記述内容を再申請させるための審議会の「指針」を示したという。この「指針」は、「軍命」の明記を禁じる一方、「集団自決」には「複合的な要因」があったとし、「天皇中心の国家への忠誠を強いた皇民化教育の存在」「軍が手榴弾を配った事実」「沖縄戦は軍官民が一体となった地上戦」などの事情を説明するよう求めたという。また、琉球新報12月7日付朝刊によれば、「指針」は「日本軍の直接的な命令で『集団自決』が起きた例は確認できていない」とし、「断定的記述は避けるよう」示唆したという。
 要するに、審議会は出版社側からの訂正申請をそのまま受け入れず、「指針」に沿った書き直しを命じたのである。一部の報道(たとえば共同通信)では、審議会が「軍の直接的な関与」は否定したものの「軍による強制」の記述の復活を認めたとされているが、それならば訂正の再申請をさせる必要はない。再申請をさせるということは、依然として文部科学省が「軍の強制」を明記することに抵抗していると見てよい。

 正直、開いた口が塞がらない思いだ。もともとこの問題のきっかけは、検定前の申請本が、すべての「集団自決」について軍が強制したとも、軍が直接命令したとも書いていないにもかかわらず、文部科学省側が曲解して、どの「集団自決」にもまったく日本軍が関与していないような記述に書き換えさせたことにある。住民の「集団自決」が「日本軍の強制と誘導によって起きたこと、日本軍の存在が決定的であったことは、沖縄戦研究の共通認識である」(関東学院大学教授の林博史氏が審議会に提出した意見書より)が、文部科学省は日本軍を主語とする記述を一切認めなかった。
 今回の訂正申請に対しても、文部科学省に反省の色は全くなく、相変わらず「軍の強制」を何とかして否定しようとしている。「皇民化教育」や「軍官民一体」の強調は、軍が住民に敵軍への投降を固く禁じた事実や、軍が存在しなかった所では「集団自決」など起きていない事実を無視し、「集団自決」の要因を当時の教育による「自発的忠誠心」や総力戦体制下での「官(軍ではない)の強制」に転嫁することで、軍の責任を弱めようという意図がある。「指針」が言うところの「複合的な要因」とは、「軍の関与だけではない」というニュアンスが込められている。
 また今回の「指針」でも「軍の直接命令」の否定に躍起となっているが、これは歴史修正主義勢力への配慮であろう。「軍の命令」という記述さえ教科書に載らなければ、「新しい歴史教科書をつくる会」をはじめとする彼らは、「軍の命令がない」=「軍の強制はない」と拡大解釈する余地がある。今回の訂正申請で「軍の直接命令」を盛り込んだ会社はないはずだが、わざわざ「指針」で「軍の直接的命令」を記述するのを厳禁したのは、修正主義者たちが絶対に譲れない一線を文部科学省が守っているという政治的アピールであろう。

 再申請が行われることで、この問題はまだ続くことが確実になった。これは時間との戦いである。教科書を来春に間に合わせるためには遅くとも今月いっぱいには内容が確定しなければならない。文部科学省は教科書出版社の足元を見て難癖をつけている。今後もぎりぎりの駆け引きが続くだろう。
 今回の件で、改めて現行の教科書検定制度の廃止を含む全面的な見直しの必要性を痛感させられた。特に教科書検定調査審議会の独立性の確保と委員の人選の透明化が早急に必要である。また、教科書調査官は廃止するべきである。教科書の作成と採択についてのあるべき姿については、機会を改めて書こうと思う。

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【転載】沖縄戦検定にかかわる訂正申請提出にあたっての声明-社会科教科書執筆者懇談会

【関連リンク】
教科用図書検定規則-文部科学省
高等学校歴史教科書に関する検定結果(平成18年度)-文部科学省
教科書検定の手続-文部科学省
沖縄戦「集団自決」問題-沖縄タイムス
沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会
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by mahounofuefuki | 2007-12-07 21:31


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