参議院厚生労働委員会は昨日(11月27日)、最低賃金法改正案と労働契約法案を与党と民主党などの賛成多数で可決した。
両案は衆議院で与党と民主党が協議した修正案であり、参議院では参考人質疑こそ行ったものの十分な審議時間を得られぬまま議決となった。 昨日の労働契約法案の審議では、共産党の小池晃議員が、就業規則による労働条件変更の要件である「労働組合との協議」に「少数組合など」も含むとの答弁を厚労大臣から引き出したり(しんぶん赤旗 2007/11/28)、社民党の福島瑞穂議員が、就業規則の労働条件変更の権利は請求権であるとの答弁を労働基準局長から引き出すなどの成果もあったが(社会法の広場:就業規則による変更権は請求権!?を参照)、出来レースとなってしまった国会審議の大勢に影響はなく、マスメディアの多くも黙殺している。 一方、最低賃金法改正案の方では、共産党が全国最低賃金の創設(現行は地域別最低賃金のみ)や生計費による最低賃金算定などを盛り込んだ修正案を提出したが、共産・社民両党以外は反対し否決された。この共産党案の大半はもともと民主党が提出した対案の内容と共通するものだが、民主党は一顧だにせず、「裏切り」が改めて浮き彫りとなった。 貧困と格差、そして労働環境という現在の日本の「下流」がかかえる最も切実な課題において、民主党が「下流」の側に立たなかったことは非常に重要である。 メディアはイラク特措法廃止案の可決のニュースは大々的に報じているが、生活に密接な法案はほとんど報じない。そのために何も知らず民主党の「生活第一」という口先だけのスローガンを信じている人々は多いが、民主党のこのていたらくにもかかわらず「政権交代」に過剰な希望を付与するのは、「政権交代」があくまでも政策実現の「手段」であることを忘却していることを如実に示している。 信者が「自民党よりマシ」と勝手に思い込んでいても、「自民党と同じ」なのが実態なのである。 ついでに言えば、新テロ特措法も今月中に参院で審議入りしたことで、時間的にはますます衆院再議決による成立の公算が強くなった。民主党はまたしても防衛利権問題で利権構造の深部に切り込むことなく、守屋武昌の証言に依存した額賀財務大臣攻撃も与党側に容易に切り返されている始末である。 検察当局が一連の疑惑を守屋逮捕で幕引きする可能性は高く、そんな時こそ国会がしっかりと追及しなければならないのだが、野党第1党としての責務を果たしているとは言い難い。 自党の議員も関係しているからといって手を緩めては、それこそ「自民党と同じ」で自浄能力がないことになる。 権力と闘うには強い意思と権力側の狡猾さを凌駕する知恵がなくてはならないのだが、現在の民主党にはそれがない。 「現状維持」を望む中間層に「自民党と同じ」であるという「安心感」を与えるつもりだとしても、それでは本末転倒である。野党時代に「自民党と同じ」政党がいざ政権について「自民党と違う」政党になることなどありえない。「自民党よりひどい」可能性はあるが。 民主党には今一度、政局ゲームではなく、政治から疎外された人々の声を真摯に聞く原点に帰ってほしい。 「政権交代」至上主義者の人々も「不都合な真実」から目をそらさないでほしい。 【関連記事】 最低賃金法改正案・労働契約法案における民主党の妥協 労働契約法に関するリンク 最低賃金と生活保護-北海道新聞の記事より
by mahounofuefuki
| 2007-11-28 12:15
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