「社会保障のための消費税増税」というまやかし

消費税増税への動きが加速している。
先月の経済財政諮問会議で、内閣府が社会保障維持のためには消費税を最低でも11%以上に引き上げる必要があるという試算を公表し、それを機に全国紙が一斉に「消費税増税やむなし」という宣伝を始めた。
伊藤隆敏・丹羽宇一郎・御手洗冨士夫・八代尚宏 「有識者議員提出資料 (給付と負担の選択肢について)」*PDF
伊藤隆敏・丹羽宇一郎・御手洗冨士夫・八代尚宏 「持続可能な基礎年金制度の構築に向けて」*PDF
今月に入ると、原油高騰やサブプライム問題による景気減速への不安から、政府・与党は来年度の消費税増税を見送る方針を固めたが、財政・税制関係の機関は動じることなく消費税増税路線を続けている。

まず財政制度等審議会が、来年度予算編成に関する意見書で、社会保障目的の消費税増税を提起した。
平成20年度予算の編成等に関する建議-財政制度等審議会*PDF
次いで政府税制調査会が、来年度税制改正の答申で、やはり社会保障の水準を維持するための消費税増税の必要性を明記した。
平成19年11月 抜本的な税制改革に向けた基本的考え方-税制調査会*PDF
さらに自民党の財政改革研究会は、明日の中間報告で、消費税の社会保障目的税化、2段階による消費税増税、消費税の名称変更などを提起するという。
社会保障目的明確化、消費税の名称変更を・・・財革研報告原案(読売新聞 2007/11/21 10:16)-Yahoo!ニュース
2009年度に基礎年金の国庫負担率が2分の1に引き上げられるのに合わせて、消費税増税を目論んでいるのが明白だ。

一連の動きに共通するのは、「社会保障給付を維持するために消費税を増税しなければならない」という思想である。
高齢化社会による社会保障費の増大→財源の不足→消費税増税」と「誘導」しているのである。

しかし、その思想は完全な誤りである。
第一に、社会保障の財源を消費税に限定する正当な理由は何もない
政府税調は今回の答申で、消費税を「経済の動向や人口構成の変化に左右されにくい」「世代間の不公平の是正に資する」と述べているが、実際は経済の動向の影響を受けやすく(家計が縮小すれば消費も減退する)、世代間の不公平を拡大する(年金生活の高齢者も税負担させられる)税である。現在、消費税以外の税も社会保障費に使っているが、何ら不都合はない。

第二に、消費税を増税すれば所得格差が増大し、結果として社会保障が貧弱になる
一般に社会保障は再分配機能があると思われているが、これは誤解である。年金も健康保険も保険料は所得にかかわらず定額で、消費税以上に逆進性をもつ。たとえば国民年金だと未納があれば給付が減額される。厚生年金だと報酬比例部分は生涯平均所得に左右される。いずれも高所得者に有利だ。
特に年金の場合、寿命に左右されるという宿命的な問題がある。社会保障の最高の受益者は「長命の金持ち」であり、最も不利なのは「短命の貧乏人」である。つまり、社会保障制度はそれ自体不平等なのである
この上、低所得者ほど不利な消費税を増税したら、ますます貧しい人の社会保障の負担力は低下し、受益も減少する。消費税増税は社会保障を安定にするどころか、保険料の不払いなどで社会保障の枠から脱落する人々を増やすだけである。
社会保障制度を持続させたかったら、所得の平等度を高くして、誰もが負担に耐えられるようにする必要がある。消費税がそれに逆行するのは言うまでもない。

第三に、財界や与党の本音は、企業減税の穴埋めに消費税増税分を使うことにある
そもそも消費税増税が社会保障目的であるという言説がまゆつばである。仮に歳出の社会保障費を全額消費税でまかなえば、今まで社会保障費に回していた他の税の分が浮く。実際はこれを利用して法人税の税率引き下げを企んでいるのである。
政府税調の井堀利宏委員(東京大学大学院教授)は、以前「消費税を上げる形での企業減税」を主張していた(ロイター 2007/10/02 19:04)。日本経団連をはじめ巨大企業の経営者たちは、ことあるごとに企業減税を唱え、法人税の実効税率の引き下げを要求している。これらの要求は消費税増税とワンセットである。

以上のように、「社会保障のための消費税増税」というのは真っ赤なウソである。
低所得から年金を払えず、健康保険証も取り上げられる人々が続出する中で、追い討ちをかけるように消費税を引き上げたらどうなるか、誰でも想像がつくだろう。
現在必要なのは、社会保障制度からはじかれた貧困層を制度内に取り込むことである。そのためには消費税の増税などもってのほかであり、所得格差を縮小するために所得税の累進を強化すること、資産への課税を強化することが何よりも必要である。


《追記》

この記事を書いたあと、消費税について興味深い記述を見つけたので、引用する。
晴天とら日和:消費税の社会保障財源化は選択肢のひとつとして幅広く検討すべき=政府税調答申⇒でもねぇ、「消費税導入」時には「福祉目的で導入する」とおっしゃってませんでしたか! 社民党は福祉削減の脅しで大増税あおるなと大反撃!⇒クソ自公チューのニャロメ!より。
(前略)消費税で苦しんでいる人たちがいる一方で、消費税をもらう人たちがいます。不公平の極みです。トヨタ、キャノン、ソニー、ホンダ、東芝、NECなどわが国を代表する大企業は消費税を一銭も納めません。納めないどころか、トヨタは年間二〇〇〇億円もの輸出戻し税を受け取っています。輸出戻し税制度です。輸出する場合、輸出先の国の税金がかかるので、輸出品に消費税をかけない。消費税をかけないのだから、輸出企業が下請けなどに払ったとされる消費税は戻しましょうという制度です。

その輸出戻し税が毎月、税務署から輸出企業の口座に振り込まれます。輸出戻し税の総額は、年間で約二兆円。これほど財政危機だと騒いでいるのに、税務署は輸出している大企業に二兆円も支払っているのです。このような輸出戻し税制度は、ヨーロッパにはありますが、アメリカにはありません。この輸出戻し税は一種の輸出補助金であり、ただちに廃止すべきと私は主張しています。トヨタは輸出戻し税があるから消費税を導入した、と言っています。

税務署は全国に五百十二あります。税金を徴収するのが税務署の仕事ですから、徴収する税金が上がる税務署ほど、署長の評価が高くなります。トヨタがある愛知県の豊田税務署は、徴収する税金が上がるどころか、トヨタ一社に対する輸出戻し税のためにマイナスです。トヨタなどが主導している日本経団連が、なぜ消費税引き上げに必死になるのか、おわかりと思います。五%の消費税で、トヨタは年間二〇〇〇億円の輸出戻し税を受け取ります。消費税が一〇%になれば、トヨタの受け取りは二倍の四〇〇〇億円になります。消費者や大部分の事業者に負担が重く、大企業に利益となる、これほど不公平な税金はありません。(後略)


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by mahounofuefuki | 2007-11-21 16:19


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