最低賃金と生活保護-北海道新聞の記事より

(2007/11/17に投稿した記事ですが再掲します。理由は追記に)

北海道新聞2007/11/17朝刊より。
電子版には出ていないので、記事本文を紹介する。
*太字は引用者による。

(引用開始)
 厚生労働省が生活保護費の給付の基本となる基準額の算定方法を抜本的に見直し、2008年度に引き下げる方向で検討を進めている。増加する社会保障費の伸び幅を圧縮するのが狙いだが、基準額の絞り込みにより、それに連動する労働者の最低賃金の底上げの妨げになる可能性もある。(東京政経部 中村公美)

 「度重なる給付削減で、生活保護世帯の暮らしは本当に深刻。食事を1日2食に減らした人も多い」。基準額の見直し中止を求めている全国労働組合総連合(全労連)や市民団体は8日、厚労省内での記者会見で訴えた。生活保護費は06年度に老齢加算を廃止するなど引き下げが続いている。背景には高齢化に伴って生活保護受給世帯が年々増加していることがある。
 厚労省は10月16日、3日後の19日に「生活扶助基準に関する検討会」の初会合を開催すると発表した。「密室で決めようとしているのか」━。突然の開催と、会場の狭さを理由に傍聴者が少人数に抑えられ、傍聴を断られた市民団体が会場前で怒りの声を上げた。
 同検討会は厚労省社会・援護局長の私的研究会との位置付けだが、事実上、同省の方針を追認してきた。今回は08年度予算に反映するため、12月中に結論をまとめる。厚労省は「『骨太の方針』にも、来年度の基準額見直しが盛り込まれている。既定路線を変えるわけにはいかない」と、基準額を大幅に引き下げる構えだ
 今月8日に開かれた同研究会の3回目の会合では、厚労省側が給与の一部を収入認定から除外する勤労控除の見直しや、地域ごとに基準額に差を付ける「級地制度」の地域差縮小を提案した。
 一方、労働組合は「生活保護費の引き下げは、労働者の最低賃金に影響が及ぶ」(連合幹部)と懸念を強めている。今国会で成立確実な改正最低賃金法(最賃法)案は、最低賃金で働く労働者より、生活保護世帯の収入が高いという逆転現象を解消するのが主眼。そのため地域別最低賃金に「生活保護との整合性に配慮する」という新たな規定を盛り込んだ。
 だが、この規定も「もろ刃の剣」。逆転現象の解消にはつながっても。生活保護が引き下げられれば、最低賃金も抑制される恐れがある。最賃法の改正がワーキングプア(働く貧困層)の解消を目指しながらも、結局は賃金の底上げにはつながらないという皮肉な結果にもなりかねない。
 だが、厚労省内では生活保護費の基準額の見直しによる最低賃金への影響についての検討はない。旧厚生省出身の幹部は「基準額の見直しは最賃法に関係なく進める」としており、旧労働省出身の幹部は「改正最賃法は、労使の協議で行うものだ」とにべもない。出身官庁同士の縄張り意識が格差解消の障害になっている。
 車の両輪のように、生活保護制度が「最後のセーフティーネット」(舛添要一厚労相)として機能しながら、最低賃金制度でも賃金の底上げにつながるのが理想的。生活保護・労働両行政の一体となった論議が求められる。
(引用終わり)

今日は時間がないので、記事の紹介だけ。
「生活扶助基準に関する検討会」については、なぜかほとんどの新聞が報じていないこと、最低賃金法改正案で民主党が政府に妥協したのが間違いであることの2点を指摘しておきたい。


《追記 2007/11/21》

厚生労働省の「生活扶助基準に関する検討会」は20日、生活保護給付基準の引き下げを決定したようだ。
生活保護費、基準額下げ確実に 厚労省検討会 地域差縮小も「妥当」-北海道新聞(2007/11/21 08:31)
まさに密室で貧困層切り捨ての準備を着々と進めているのである。
この期に及んでも北海道新聞以外はまともに報道しないのが謎だ。

【関連記事】
新たな「棄民政策」
民間給与実態統計調査
最低賃金法改正案・労働契約法案における民主党の妥協
「反貧困たすけあいネットワーク」

【関連リンク】
厚生労働省:生活扶助基準に関する検討会第1回資料
厚生労働省:生活扶助基準に関する検討会第2回資料
厚生労働省:生活扶助基準に関する検討会第3回資料
生活保護問題対策全国会議blog
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by mahounofuefuki | 2007-11-21 16:49


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