本格化する消費税増税の動き

世論はすっかり「小沢騒動」一色だが、そんな喧騒をよそに、政府による消費税増税への動きはいよいよ本格化している。
昨日(11月5日)首相官邸で行われた政府税制調査会の総会には、就任後初めて福田康夫首相が出席し「社会保障や少子化などについて将来あるべき姿を描き、必要な安定財源を確保し、負担を先送りしないようにするのが政治の責任だ」とあいさつした(毎日新聞 2007/11/05 20:00)。
「安定財源」「負担を先送りしない」とは消費税の増税を指したも同然で、すでに2008年度税制改正の答申に消費税引き上げを盛り込むことを決定している政府税調に完全同調したと言えよう。

この日の会合後、政府税調の香西泰(こうさい・ゆたか)会長は会見で「将来の消費税増税は社会保障制度維持のために不可欠で、同時に所得などの格差是正策を講じる必要がある」と述べる一方、法人課税の実効税率を引き下げるべきとの認識を示したという(フジサンケイ ビジネスアイ 2007/11/06 08:35)。
税調の主流が、法人税の減税のために消費税を増税しようとしていることがよくわかる発言である。

政府税調のホームページには税調内の議論をまとめた資料が公表されているが、税調の消費税をめぐる議論は、まず増税ありきで、いかに大衆を騙すかに費やされている。
これまでに出された主な意見等(消費課税関係)*PDF

たとえば、「経済活性化を重視する観点から、勤労世代への負担集中を回避することや、経済活動に歪みを生じさせない中立性や国際競争力も重視すべき」という意見は、まるで消費税が「全世代に公平な」税制と言っているようだが、実際には消費税は所得の少ない若年層と年金生活を送る老年層にとって辛い税である事実がまったく念頭にない(消費税が上がっても給料や年金給付が増えるわけではない)。
あるいは「消費税が実質的に福祉、特に高齢者のために使われていることを国民に理解してもらうことが重要」という意見は、なぜ福祉の財源が消費税でなければならないか説明がつかない。高齢者に給付するために高齢者への課税を強化するのは本末転倒である。

何よりも私が憤りを感じたのは、「社会保障は再分配において大きな役割を果たしており、消費税の『社会保障財源化』については、消費税が社会保障による再分配を通じて受益面から大きな役割を果たしている」という部分である。
日本で再配分に占める社会保障の役割が大きいように見えるのは、税制が再配分の役割を果たしていないからにすぎない。現に税調内でも「『逆進性』で言えば、(消費税より)社会保険料の方がはるかに逆進的」という指摘があり、所得にかかわらず保険料が定額である社会保険は極めて不平等で、再配分には何ら寄与していないのである。
特に年金給付の場合、所得以上に「寿命」に左右される。早死にした人はどんなに現役世代に保険料を支払っていても、それに見合った給付を受けることはできない。
逆説的に言えば社会保障はどんなに工夫しても再配分効果を高めることなどできないのである。

だからこそ、税金の方こそ累進性を高めて再配分効果をもたせる必要があるのだが、そういう意見は税調ではほとんどない。
現行の税体系を前提に消費課税のウェイトを高めることは、格差社会を助長するおそれがあり、所得税における累進性の回復、資産所得への課税強化、低所得に対する配慮、法人税との関係等の視点を踏まえ、税体系全体の見直しの中で考えることが不可欠」というのが唯一の真っ当な見解で、こういう発言をする人がいるだけ、不当な金持ち言いなりの経済財政諮問会議よりましではあるが、それも気休めでしかない。

ところで、朝日新聞が今月3~4日に消費税増税について世論調査を行っているが(朝日新聞 2007/11/05 23:52)、その結果が興味深い。
「消費税の引き上げが必要か」という問いに、「必要だ」は43%、「必要ない」は49%で、拮抗している。ところが「社会保障の財源確保のために消費税を引き上げることに納得できるか」という問いだと、「納得できる」が36%、「納得できない」が54%なのである。
しかも「納得できない」と答えた人は、30代で61%、50代で55%、70歳以上で42%と、年齢が若いほど消費税と社会保障の関連性に懐疑的なのである。
これは税調の思惑(「勤労世代」への負担集中を回避するために消費税を増税するという詭弁)とは裏腹に、現役の「勤労世代」の方こそ消費税引き上げに抵抗感が強いことを示している。
同時に、高齢者は税負担の増減よりも、目の前の年金給付が減ることへの不安をかかえていることがわかる。

今後、消費税増税阻止のために必要なのは「年金の財源にするために消費税増税が必要」という考えに洗脳されている高齢者に対し、「消費税増税の目的は企業減税の穴埋め」という真実をアピールすることだろう。
心配なのは民主党のゴタゴタが、消費税増税に有利に働いていることであり、最近の増税への政府の動きもすっかり隠されてしまっている。もともと民主党には消費税増税を公約に掲げた「前科」があるので信用ならないとはいえ、現在のところ消費税増税に反対している以上、賛成に転じないよう繋ぎ留めなければならない。
消費税が争点となる次期総選挙を「郵政」の二の舞にしないよう注意したい。

【関連記事】
政府とマスコミが一体化した「消費税増税キャンペーン」
消費税増税問題に関するリンク
法人申告所得過去最高でも消費税上げますか?

【関連リンク】
Yahoo!ニュース-消費税引き上げ問題
内閣府 税制調査会
[PR]
by mahounofuefuki | 2007-11-06 20:30


<< 「小沢一郎のいない民主党」は不... NOVA前社長と「俗物」の境地 >>