政府とマスコミが一体化した「消費税増税キャンペーン」

福田内閣が発足した時、私はブログで「歳出削減による社会福祉の切り捨てを続ける一方、消費税増税で庶民の負担を増やし、巨大企業に対する減税は拡大するという、今以上に最悪の財政政策を目指す可能性」を指摘し、「年金不安を利用して、年金の財源にするという口実で、消費税増税を打ち出してくるだろう」と予測したが、残念ながらその予測が現実のものとなりつつある。

自民党の谷垣禎一政調会長や与謝野馨税調小委員長らが機会あるごとに、増大する社会保障費の財源として消費税の大幅増税の必要性を力説していたが、今月17日の経済財政諮問会議では、経済成長率ごとの給付と負担の増減に関する複数の長期試算が提出され、消費税を11~17%に引き上げる必要があるとの見解が提示された。
平成19年会議結果 第23回会議 会議レポート:内閣府 経済財政諮問会議
伊藤隆敏・丹羽宇一郎・御手洗冨士夫・八代尚宏 「有識者議員提出資料(給付と負担の選択肢について)」

こうした政府の動きに呼応するように、各新聞も消費税増税への世論誘導を本格的に開始した。
以下、17日の経済財政諮問会議に関する全国紙の社説である。
消費増税 真正面から議論せよ(朝日新聞2007/10/19)
財政試算 真っ当な議論はこれから(産経新聞2007/10/19)
財政立て直しの基本は成長と歳出削減(日本経済新聞2007/10/19)
増税論議 地に足の着いた政策を示せ(毎日新聞2007/10/19)
給付と負担 消費税の「封印」が解かれた(読売新聞2007/10/20)

「財政健全化は増税よりも歳出削減を主体にすべきだ」と消費税増税に消極的なのは、徹底した「小さな政府」論に立つ日経のみで、あとの4紙は程度の差こそあれ、消費税増税を支持している。

最も積極的なのは読売で、内閣府の試算が増税の内容を所得税と消費税半々にしたことを「増税の影響が現役世代に偏る所得税を引き上げるのは難しい」と批判し、消費税の増税を明確に主張している。朝日は「同時に歳出削減の手を緩めるな」と条件つきながら、「いずれ増税が避けられない」と述べている。読売との違いは「消費税など」と他の税の増税を示唆しているくらいである。毎日も「消費税率引き上げを避けるわけにはいかない」と消費税増税に賛同している。産経は増税支持を明言していないが、消費税論議を封じ込めようとした安倍政権時代の「上げ潮派」を批判しており、事実上消費税増税に傾いている。

大新聞が軒並み1つの方向に、それも政府に同調する方向に傾いていることは、日本の言論状況の危機であるのは言うまでもない。
歳出削減か消費税増税かという二者択一の議論の組み立て方そのものへの批判がまったくないのは実に不可解である。このあたりが企業広告に依存する新聞の弱点を曝け出している。

問題は「歳出削減か消費税増税か」ではなく、「何を歳出削減し何を増税するか」である
小泉政権は大企業や富裕層への減税を繰り返し、庶民には負担を押し付けてきた。その結果、行政のサービスは低下し、負担に見合った受益を得られなくなった。しかも歳出削減と言いながら防衛費や大企業への補助金は「聖域」として触れて来なかった。この歪んだ「構造改革」路線を中止し、切り捨てられた社会保障への歳出を復活させる必要がある。
歳入を増やすために増税は必要だが、なぜそれが消費税なのか。消費税は所得や資産の大小にかかわらず、同一の税率のため、貧しい者ほど不利な税である。消費税の増税で庶民を貧困に追いやり、社会保障費を増大させるのでは本末転倒である。
限界まで緩められた法人税や所得税の累進度を元に戻すことが何よりも必要である

今回は時間がないので税制の具体的な分析は別の機会に譲るが、福田政権とマスコミが一体となった「消費税増税キャンペーン」には警戒してほしい。所得が不平等な状態での消費税の増税は、必ず貧困と格差を拡大させることを常に念頭に置いておかねばならない。


(補足 2007/10/22)

経済財政諮問会議の試算の問題性を告発する記事があるので紹介する。
私と同様「何を歳出削減し、何を増税するか」という視点に立っており、共感できる。

消費税増税に導く経財会議の試算 三つのからくり告発 (しんぶん赤旗 2007/10/22)より。

 日本共産党の小池晃政策委員長は二十一日、フジテレビ系番組「報道2001」に出演し、経済財政諮問会議(議長・福田康夫首相)に提出された試算について、“消費税増税は仕方がない”と国民をだます「三つのからくりがある」と告発しました。
(中略)
 小池氏が指摘した「からくり」の一つ目は、「歳出削減」といいながら、対象にしているのが社会保障費だけだということです。小池氏は「軍事費も公共事業費も、名目成長率(2―3%)で伸び続けるという計算になっている。この計算でいくと、二〇二五年には防衛費が八兆円を超えることになる。社会保障費のほかは一切、歳出見直しをしないというものだ」と批判しました。

 二つ目は、こうしてふくらませた増税分をすべて消費税でまかなう計算になっていることです。小池氏は「税は消費税だけではない。法人税、所得税、資産課税だってある」と告発し、能力に応じた負担を求めました。

 三つ目は、この試算が経済財政諮問会議の民間議員である日本経団連の御手洗冨士夫会長らが政府につくらせた数字だということです。

 小池氏は「消費税を20%まで増税し、法人税を下げよといっている人たちが、自分たちに都合のいいシナリオを出したもの。それに与党の増税派が勢いづいている。こんなキャンペーンは絶対に認められない」と述べました。
(中略)
 小池氏は「(今後)社会保障の給付費が増えるのは当たり前。日本の財政には、それを支える力がないのかという問題だ」と指摘。欧州ではすでに社会保障の給付がGDP(国内総生産)比で約30%なのに、日本では今回の試算でも二〇二五年で19%にすぎないことを示し、「社会保障は極めて貧しくし、消費税だけはヨーロッパ並みにするというものだ」と批判しました。


(補足 2007/10/23)

関東知事会が、国に消費税引き上げを求める緊急提案書を出すという (共同通信 2007/10/23 19:42)。政府とマスコミの「消費税増税キャンペーン」に、地方自治体までが加わるようだ。着々と包囲網が出来つつある。要注意が必要だ。
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by mahounofuefuki | 2007-10-21 13:29


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