陸自情報保全隊の監視活動をめぐって

*2007/10/06に投稿した記事ですが、再掲します。理由は追記に。

陸上自衛隊の情報保全隊が、イラク派遣に反対する市民の動きなどを「情報収集」していた問題で、仙台の自衛隊派遣差し止め訴訟の原告らが自衛隊の「情報収集」活動の中止と損害賠償を求めて提訴した。
今年6月に自衛隊資料(とされる書類)を共産党が入手し公表して以来、この問題での訴訟は初めてという。
共産党のホームページで公開された資料は、極めて詳細かつ具体的、そして広範囲で、陸自の市民監視活動が常態化していることを窺わせた。もちろん憲法違反であり、主権者に対する背信行為である。提訴は当然であり、訴訟を通して少しでも実態の解明が進めば幸いである。

ただ、私はこの問題については、資料公表以来、ある「疑念」をもっている。
それは自衛隊サイドが故意に問題の資料を漏らしたのではないか、という疑念である。
共産党の情報力を疑うわけではないが、正直なところあんな第1級の機密資料(としか思えない)が簡単に漏洩するだろうかという疑いが消えない。むしろ防衛省・自衛隊側がある意図をもって外部の手に渡るように仕組んだのではないか。

その意図とは、主権者としての自覚をもって政治行動する市民と、そうではない「普通の」大衆とを分断することである。
実際、この問題が発覚した時、ジャーナリストや法曹関係者や社会運動家は抗議の声をあげたが、一般の反応は冷ややかであった。市民運動と特に関わりがなく、集会にもデモにも参加したことのない人々(それはこの国の多数派である)は、「自分とは関係ない」で済ませた。そして改めて平和運動や労働運動などに参加すると「国に睨まれる」と「学習」したのではないか。
平穏に生活したければ国に逆らわず、多少の不満は我慢して、せいぜい権力が用意した「公認の敵」をバッシングして日常の欝憤を解消する。残念ながらそうした「小市民的保守主義」が現在の日本社会の主流である。
自衛隊はまさにその現実を突き、「反体制分子」を一般の人々から孤立させることを狙ったのではないか。すでにイラク人質事件の時に、相当な数の人々が人質らを「プロ市民」と攻撃したという事態があったが、そうした状況を促進するために、わざと監視資料を外部に流したという見方は穿ちすぎだろうか。

もちろん、実際は監視活動を「プロ市民」に限っているという保障は何もないし、たとえ今は少数の人々しか監視していなくても、そういう活動が長く続けば諜報まがいのやり方が一般の住民にも拡大することは、戦前の治安維持法で経験済みである。
ゆえに、自衛隊の監視問題は日本に住むすべての人々に関わる問題なのだが、そこまで危機感をもっている人がいったいどれだけいるか心もとない。
さらに、自衛隊でさえこれだけの「情報収集」を行っているのだから、公安調査庁や警察の公安セクションはまだ強力な活動を行っているのではないか、という想像も働く。いずれにせよ手遅れになる前に、世論を喚起するための知恵と工夫を編み出さねばなるまい。

《追記》
日弁連が2007/10/31付で、陸上自衛隊の情報保全隊による監視活動を中止するよう求める意見書を防衛大臣らに提出したそうだ。
薔薇、または陽だまりの猫 陸上自衛隊による市民監視についての意見書/日弁連
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by mahounofuefuki | 2007-11-03 00:26


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